個人投資家が経営トップになったFVCについて分析してみた

こんにちは。

今日は、FVC(フューチャーベンチャーキャピタル)について分析してみたいと思います。

 

まず、最初に事の顛末をお伝えすると、個人投資家である金武偉氏が株主提案で、経営陣の一掃及び金氏の代表取締役就任を行い、見事可決されたということです。

 

個人投資家が株主提案で代表取締役になるという異例の事態となっています。

付言すると、今回個人投資家とされている金氏は、ゴールドマン・サックス証券JPモルガン証券プライベートエクイティファンドユニゾン・キャピタル出身であり、プロの投資家であると言え、且つすでに幸楽苑ホールディングスの社外監査役に就任していることもあり、狭義の個人投資家ではありません。

ただ、金氏の持株比率は2.2%前後であることから、持株比率が低くても株主提案次第で、その会社の経営を司ることができることを示したことになります。

 

いずれにせよ、投資家界隈を騒がせたニュースであることは確かです。

ということで、早速FVCの業績と事業、株主提案の内容について調べてみたいと思います。

 

FVCについて

2000年に上場と既に20年以上も上場している独立系のベンチャーキャピタルです。

見るに、大株主の存在はなく、浮動株比率が高い銘柄です(だからこそ今回の株主提案が通ったということもありますが)

 

業績とか(2022年3月期)

売上高:546百万円

営業利益:64百万円

経常利益:165百万円

純利益:143百万円

PER:37.35倍

PBR:1.94倍

ROE:5.4%

配当利回り:0.49%

時価総額:7,469百万円(2022年6月28日現在)

株主総会後株価が急騰しているためこの時価総額水準ですが、その前は50億円くらいの時価総額でした。

 

見てみると、収益力がある、ないという話以前に売上高が低いことがわかります。

ファンドビジネスというのは基本的には、ファンドを組成し、管理報酬と成功報酬の二本立ての収益構造となっています。

 

株主提案の内容

まとめるとこのような感じです。

・ファンド本数が多すぎることにより、管理コストがかかっているため、ファンドの本数を減らし、大きなサイズのファンドへとシフトする。

・事業再生投資を行う(自己勘定での投資を含む)

・優良企業への追加投資を行うことで、リターンの追求を目指す(現在は、管理報酬に依存し、成功報酬が少ない)

 

事業について

2022年3月期の売上高を見ると、管理報酬のみが収益となっており、成功報酬はありません。これではファンドビジネスとは言えません。

スタートアップへ投資するというビジネスモデルからも、大きく成長する企業へ投資を行うことで、成功報酬が入るというものですから、これではファンド組成屋さんになってしまいます。

 

旧経営陣は、自らのビジネスモデルを、VaaS(VC as a service)と定義していますが、この経営成績では成功報酬があがらないことの詭弁と取られても仕方ないように感じます。

 

考察

個人的には、新しく代表取締役に就任した金氏、PEのユニゾン・キャピタル出身ということで事業再生分野における見識は非常に深いのかと思います。

FVCは、これまで地方銀行とファンドを多く出資してきたことからも、地方銀行のパイプラインは強いものがあると推察されます。

おそらく、自己勘定で、地方銀行から紹介された地場企業を純資産などで安く買い、その企業をバリューアップして売却または上場させるという戦略があるものと考えられます。

事業構造が大きく変化するタイミングですので、今後も注目していきたいと思います。