松井証券の決算を分析してみた

こんにちは。

直近で、極東証券の決算を分析して、ネット証券の決算を見てみたくなりました。

その中で、最も扱うプロダクトが少なく、高い収益率を誇る(誇っていた!?)松井証券の決算を分析してみました。

 

2022年3月期決算

売上高:30,616百万円

経常利益:12,791百万円

純利益:11,439百万円

PER:18.29倍

PBR:2.66倍

ROE:14.5%

時価総額:210.522百万円(2022年5月6日時点)

純利益率が30%近くあり、高い収益率を誇っていることがわかります。

 

社長交代後の松井証券

松井証券は長らく創業家である松井家の娘婿となった松井道夫氏が経営をリードし、対面証券会社からネット証券ビジネスへのビジネスモデルの転換を行い、見事超高収益企業へと変貌を遂げることとなりました。

松井道夫氏の基本戦略は、ネット証券ビジネスで低コスト化すること、取扱商品を主に株式に絞ることでも固定費の削減に努めること、低手数料を機にアクティブトレーダー層を獲得し、アクティブトレーダー層を中心に信用取引を提供することで金利収入を大幅に増やすというものでした。

それによって松井証券は大きな成長を遂げ、金融機関としては珍しく、PBR1倍を超えることとなりました。

 

しかし、2020年に松井道夫氏が退任し、和里田常務が社長に就任することが発表されました。

和里田氏は、P&G、リーマン・ブラザーズ、UBSなどを経て松井証券に入られて、いわゆる金融村の住人感がすごいですね。

また、松井道夫氏のご子息が、取締役に就任するなど和里田氏が、交通整備をして、新松井証券の舵取りをご子息に譲ることかなと邪推ができます。

 

新社長の施策

さて、和里田社長になってから、大きく会社が変わってきております。

まずは、決算説明資料のフォントが変わりました。ネット業ぽい感じを全面に出しております。

そして、松井道夫社長時代墨守した取扱プロダクトの限定から、様々な金融商品を提供するスタイルへと変更しています。

 

主に変わったことしては、

投資信託分野の強化

・米国株サービスの提供

IPO引受業務への参入

・FXサービスの刷新

 

以上に伴い、

以前平均すると、500百万円前後だった広告宣伝費が1,904百万円に、人件費も2,000百万円程度だったのが、3,054百万円になっています。

ここまでで年間2,500百万円程度の固定費増加に繋がっています。

施策としては、Youtubeチャンネルは他の証券会社のものよりも明らかに試聴回数が多い結果となっていますし、収益的にまだ刈り取りの時期ではないですが、種はたくさん蒔いているという感じですね。

 

考察

ネット証券はそのビジネスをスタートさせたのが2000年前後で、各社22年程度の月日が経過しています。

その中で、平均年齢層が高くなり、新規の若年層の囲い込みが重要な課題になっています。

それに伴い、各社同様の商品ラインナップ、施策が行われています。

個人的な感想ですが、ネット証券界隈は、新規顧客の獲得において、SBI証券楽天証券の2強になっており、特に楽天証券の1強になりつつある状況であると思います。

ただ、ネット証券会社は、既存の顧客層の信用取引による金利収入、投資信託の信託報酬、株式手数料で十分、いや十二分に利益が計上される構造です。

松井証券に関しては、社長が交代し、新しい施策を打ち出すことで、自分色を出したいのでしょうけど、固定費を上げて上げて、他社に戦略を揃える必要がどれくらいあるのでしょうか?

特に、ネット証券のユーザーは明らかにまず、SBIか楽天かの口座を開設し、その後松井やマネックスの口座を開設する傾向にあります。たとえ、その順番が逆だったとしても数社の口座を開設することが多いかと思います。

その中で、各社が同一のサービスを提供することに特段意味が見出せません。

これほどキャッシュリッチなビジネスを抱えているならば、固定費を下げる努力をし、既存顧客から利益を上げるビジネスを続け、余ったキャッシュは全て新規事業に注ぐ方がいいように感じます。

あるいは、新規事業に投資する自信がないのであれば、既存株主に還元することから、次の企業へ投資する、資金循環が起こるべきだと思います。

改めて松井道夫氏の慧眼には頭が下がります。