丸井グループのtsumiki証券について分析してみた

2年くらい前に、証券/資産運用系の新興企業を分析したことがありました。この業界は、いわゆる儲かる企業でして、特に運用業界はAUMが伸びれば伸びるほど儲かる(変動費も固定費も少ない)傾向にあります。その中で、新興企業がどういった戦略でその儲かる域に行くのかが大変興味があり、比較したことがありました。
それから2年も経つので、また業界内も再編や新規上場など様々な動きがあったかと思いますが、今回は、その時とっても注目していた丸井グループのtsumiki証券について分析してみたいと思います。

tsumiki証券について


tsumiki証券は、丸井グループの100%子会社として2018年2月に設立されました。丸井グループは小売企業でありますが、金融部門が強く、エポスカードを中心に事業を展開しています。設立当時思ったのが、顧客へのリーチが強く、且つ金融業務に関しても造詣が深い丸井グループが証券業界に殴り込んでいったということでとても興味深かったです。
当時の丸井グループ/tsumiki経営陣は、丸井グループの顧客層(おそらく30-50代の女性)を投資にうまく誘導することで、残高を増やしていく戦略だったと思いますが、果たしてうまくいってるのかどうなのか見ていきたいと思います。

最近の業績


直近の業務及び財産の状況に関する説明書(2021年3月期)によると、
「当事業年度は、営業収益は 1,161 万円、販売費・一般管理費は 48,896 万円となり、この結 果営業損失は 47,734 万円、当期の純損失は 69,839 万円となりました。」
ということでした。
うー-ん、まだまだ結構赤字掘ってました。
営業収益の推移は、
2019年3月期:1,020千円
2020年3月期:3,401千円
2021年3月期:11,617千円
ということで、3倍ずつきていることがわかります。残高は伸びてますね。6月期頃には2022年3月期の決算が出るので、楽しみです。

創業からここまでの、累積赤字は1,532,932千円。丸井グループの規模からしたら大したことないと思いますが、丸井グループの当初の想定と比べるとどうなのでしょうか。
ちなみに、設立当初は、丸井グループプロパーのいかにも社内で優秀そうな方が社長をされてましたが(2021年3月期でもそう)、今は丸井グループ本社の執行役員の方が務めていらっしゃいます。
これは業績不振によるものなのか、単なる人事異動かは不明です。

もう少し、業務及び財産の状況に関する説明書を深堀してみたいと思います。
※ここからは完全に個人の妄想の世界です。その点、ご留意ください。

売上の世界


営業収益:11,617千円
いくつか投資信託が用意されていますが、とりあえず信託報酬を1%として、運用会社とのレベシェアで半分tsumiki証券が取るとすると0.5%。
すると現在の預かり資産は約23-25億円程度でしょうか。
販売費・一般管理費が、488,960千円なので、ここをざっくり固定費とすると(粗い計算ですが・・)
この費用の水準で利益を出すには、約1,000億円の預かり残高が必要となります。
今の預かり残高からすると約40倍。うー-ん、何年かかるんでしょうか。

費用の世界


販管費はそんな大きく増えることもないと思いますが、あまり削減できる項目もないように見受けられます。
一般的な投資信託の販売業者(証券会社?)と違い、カード/ポイント積立していると思いますので、おそらく丸井グループに手数料をバックする必要があると思いますが、まぁグループ内取引なので一旦無視しましょう。
あとは、人件費、細かく記載されているので見てましょう。
役員報酬:52,081千円
役員は常勤取締役4名、非常勤取締役1名、監査役1名。非常勤は丸井グループから別途報酬があると思いますので、常勤の方々のみで考えます。証券/運用の世界観的には少し低いように思いますが、小売りの世界観だとこんなものなのでしょうか。こちらも丸井グループから別途報酬が発生しているんでしょうか。
従業員給料:47,913千円
従業員9名。たぶん安いです。
報酬については、金融業界は高い高いと言われますが、小売り×グループ人材で安くできているのかもしれませんね。

個人的な感想

丸井グループの戦略として、自らの顧客層を活用して、金融の世界に入っていきたいというのが当初の設立理由だと察します。そうした意味だと顧客との金融面での接点を持ったということで意義深い会社だったかもしれませんが、企業は儲けてナンボだと思いますので、収益化に向けていち早く動く必要がありますね(動いているとは思いますが・・)

今後の戦略


基本的には、残高が増えれば増えるほど儲かる業界であり、すごいシンプルな収益構造です。
営業収益=顧客残高(新規顧客増or/and既存顧客の残高up)×手数料率
手数料率をいじるのが一番早いのですが、手数料率の高い商品(e.g.アクティブファンド、ブルベア型ファンド)はtsumiki証券が考える顧客ターゲット層とマッチしていないと思いますので、愚直に残高を増やしていくしか営業収益改善に向けて取れる手はないですね。
すごく安直な意見ですが、丸井グループがもっとtsumiki証券について真剣に考えるか、支払う手数料を多くしても魅力的な施策を打つかになると思います。魅力的な施策は、覆水盆に返らずで一度やると後戻りできなくなるので、顧客層への周知徹底、既存投資家に投資のおもしろさを理解してもらうそういったキャンペーンが必要になるかと思います。
丸井グループが抱えている顧客層は、金融業界垂涎の的であることはたしかなので、それを活かしてほしいなぁと思います。