帝国ホテルの業績を分析してみた
こんにちは。
ここ何回か儲かっている企業についての分析を行ってきましたが、まぁそうだよね、施策が、市場環境がうまくいってるんだね、というところまでの分析しか出来ておらず、逆に儲かっていない企業はどんな状態なのか気になってきたので、見ていきたいと思います。
ということで赤字の企業、その中でも今回は帝国ホテルについて分析してみます。
帝国ホテルは言わずと知れた名門ホテル、しかしコロナの影響を航空会社と並びモロに受ける企業でありまして、今どんな状態が見ていきたいと思います。
帝国ホテルについて
1887年創業。渋沢栄一と大倉喜八郎の発起、ということでここだけでも歴史のありまくるホテルであることがわかります。
現在は、本館タワーの建て替えに向けて準備を進めている段階のようです。
2024年から2036年までの工事ということで、まさに社運を賭けたプロジェクトであることがわかります。
業績とか(2021年3月期)
売上高:22,051百万円
経常利益:-7,901百万円
純利益:-14,363百万円
PER:-8.24倍
PBR:2.57倍
ROE:-26.9%
時価総額:107,210百万円(2022年4月28日時点)
うーーん、かなり厳しい数字であることがわかります。
2022年3月期第三四半期累計でも、
売上高:21,075百万円
経常利益:-4,150百万円
となっています。
中間報告書では、東京、大阪、上高地全てにおいて売上高は大幅に回復しているものの固定費の高さもあり、赤字となっています。
帝国ホテルの事業
収益は三本柱で、帝国ホテル東京、帝国ホテル大阪、不動産賃貸事業となっています。
収益源としては、
東京が大阪の約4倍くらいでしょうか。それにしてもコロナ禍はすごいですね。
続いて、客室利用率など。
コロナ前における客室利用率は約80%くらいでしたので、こちらもまた数字で見るとさんざんなものです。
しかし、気になるには大阪の食堂の回転率が、前会計年度ベースで、2倍も開きがあります。なぜでしょう。ランチが多いとか?わかりませんでした。
こんなに赤字で大丈夫なのか??
という疑問が出てきました。
BSを見てみます(2022年第三四半期累計より)
利益剰余金:38,370百万円
負債は借入金がなく(その後シンジケートローンで9,000百万円をみずほ銀行と京都銀行から借入することを発表しています)、退職給付債務が6,890百万円となっています。
資産サイドでは、現預金が13,872百万円、有価証券と投資有価証券が15,955百万円と6,253百万円、建物が10,154百万円が大きなものとして記載されています。
これまで帝国ホテルが真面目にホテル経営をし利益剰余金を蓄積してきたことがとてもよくわかります。
コロナ前までは、純利益率が10%ほどあり、高収益企業であったことが伺えます。
今後、ウィズコロナという社会の中で、需要がかなり戻ってくるでしょうけど、今期の赤字は約5,000百万円と仮定すると、この赤字水準だと現預金ベースで2年強、有価証券を含めると4-5年は耐えられる強いBSを持っています。いやぁすごい。
それと帝国ホテルの株主はすごいです、株式会社オールジャパンという感じです。
この大株主から社外取締役もゴッソリ派遣されていて、これを見るだけだと働くのが息苦しくなりそうな感じです。
考察
ウィズコロナ、アフターコロナのトラベル宿泊関連のインサイトが何かあるかと思いましたが、あまり有益な情報がありませんでした。
新タワーの建設、コロナによる需要回復頼みといった感じだと思います。正直厳しいですね。歴史のある企業ですし、バックに日本を代表する大企業もついているし、何かしらの形で生き残る企業だと思いますし、帝国ホテルは生き残って欲しいと個人的に思います。
ただ、株主になるという観点から言えば、成長への力強いストーリーが欲しいところですが、会社の状況を鑑みるに、歴史を積み重ねることにプライオリティがあるように感じます。